家族に突然「パニック障害」を発症したと言われたら、「育て方が悪かったから、ストレスに弱い人間になった?」「知らぬうちにこの人のこころを追い詰めていた?」とこころから心配するあまり誤解されるご家族も多いかもしれません。
ですが、こういうことはあまり関係ありませんので自分を責めないでください。
繊細な病なだけに、「なんて言葉をかけてあげたらいのか?」「これからどう支えてあげたらいいのか?」ご家族さんならこのような疑問をお持ちなのではないでしょうか?
この記事では下記のことがらなどを紹介しております。
- 『パニック障害とはどのような病気で症状があるのか』
- 『パニック障害になる人の特徴・原因』
- 『パニック障害になった人にかける言葉は?』
- 『発症した人にどう対応する?』
わたしは、16年前からうつ病を発症し、投薬(抗うつ剤・抗不安薬・頓服)とカウンセリング治療を行っています。
症状が重かったときは母にとても迷惑掛け、悩まし、悲しませていたと思います。
今回、この記事を執筆するにあたり色々なことを調べる中で「わたしにもその症状あるある」というのが出てきました。
そんなわたしだからこそご紹介できることがあります。
この記事で紹介することを実践し、発症をした当事者さんと共にパニック障害を治していく道を見つけてください。
まずは、正しい知識をつけるところから初めてみましょう。
パニック障害とは?
パニック障害は、突然理由のない強い不安や激しい恐怖や強烈な不快感の高まりが10分~15分の間にピークに達する「パニック発作」が繰り返される状態を差しています。
代表的な症状
【動悸】~もっともよく現れる症状~
- 心臓が破裂する
- 心臓がバクバクして口から飛び出しそうになる
- わしづかみにされると感じる
【呼吸困難・息苦しさ】~代表的症状~
- 呼吸の仕方がわからなくなる「過呼吸」
- 息が詰まって吸えない
- 窒息しそうになる(この間隔は死につながり強い恐怖症を起こして失神する人もいる)
- めまい
- 頭がふらふらして失神しそうになる
- 頭から血が引いていく
- 頭が後ろに引っ張られる
【胸の圧迫感】
- 胸(心臓)の一部がチクッと痛む
【ふるえ】
- 手足や体がふるえる
- 全身がガクガクとけいれんするようになる
※自分ではコントロールできなくなります。
【発汗】
- 恐怖や不安による冷や汗をかく
※冷たい汗は恐怖感や不安感をさらに強め、不吉な感覚を呼び起こす。
【現実感がない離人感】
- 「自分の心や体をもう一人の自分が外から眺めている感じ」と言った表現をされます
※この症状は、「意識がなくなりそう」「孤独感におそわれる」といった形で現れることもある
【制御不能・気が変になる恐怖】
- 強い不安や恐怖におそわれ、このまま頭がおかしくなるのではないか
- 自分でコントロールできず人前で取り乱し、とんでもない行動をしてしまうのではないか
【死んでしまうかもしれないという恐怖】
- 激しい動悸や呼吸困難などで、自分はこのまま死んでしまうのではと死への恐怖におののく状態
症状が進むにつれて、発作をおそれて「電車に乗れない」「人込みに出られない」「つらいトラウマ体験が思い出されて仕事や家事ができない」などの症状がでるひともいます。
あわせて知っておきたい豆知識
パニック障害は女性の病気?
POINT
- 罹患率が男性の2~3倍と高いため女性の病気と思われがち
- 女性のホルモン分泌は複雑でバランスを崩しやすく、不安を招く
- 男性は、発病してもギリギリまで耐え受診しない傾向がある
パニック発作の特徴4点
1.不意に起こり急速(10分~15分)にピークになる
- 本人も意識していない時に、何も引き金になる状況もないのに不意に起こり急速にピーク に達する
2.繰り返し起こる
- 人によって違うが、最初の発作から2回目の発作までの間隔はだいたい数日~数週間
- 2回目の発作のあとは連続して起こるようになり、それが不安を強める
3.体の異常はみつからない
- 体の検査をしても何も異常がない
- 心臓や肺などの臓器の病気のために発作が起こるわけではない
4.1日24時間いつでも起こりうる
- 昼でも夜でも発作が起こる可能性がある
- 睡眠時の発作は40%の患者さんに認められる
パニック障害がたどる経過
1.不意にパニック発作が起こる
(最初は、場所・状況に関係なく突然パニック発作が起こる。)
発作を繰り返し経験するうちに、発作体験と発作が起こった状況や場所を結び付け緊張感を高めて自ら「発作が起こりやすい状況」を作ってしまう。
2.「予期不安」を持つようになる
(発作の回数は減っていくが、発作の経験が頭から離れず、また発作が起こるのではないかと不安が募る)
「回避行動」をとるようになる。発作が起こるような場所や状況を避ける。
3.「(※1)広場恐怖症」を伴う
- 発作を予感する場所や状況が恐怖の対象になっていく
- 恐怖の対象が広がると、家から一歩も出られなくなることもある
- 人前で発作が起こすことを恐れ、人を避けるようになることもある(二次的対人恐怖)
【広場恐怖症のレベル】
◎軽度
- 外出に不安があるが、どうしても必要な場所(病院など)だけは1人で行ける。
◎中等度
- 1人での外出が困難で、行動が制限される。
- 付き添いがあると行くことができる。
◎重度
- ほとんど家から出られず、引きこもるようになる
4.「残遺症状」が出る
- 発作が起こる間隔が開き発作の症状が軽くなるが、心身の調子はすぐれず、不快ば不定愁訴があらわれる。
- 慢性期になると、約60%の人に(※2非定型うつ病)を併発する。
(うつ状態は前触れのように最初のパニック発作の前に現れることもある)
☆パニック障害は1度パニック発作を起こして発症すると、上記のようにほぼ決まったコースを辿ります。
※うつ病の併発は個人差あり。
※1.ここで差す「広場」とは、広い場所を差すのではなく、発作が起きても「逃げられない場所」「助けを求められない場所」のことで、そのような場所や状況に身を置くことに恐怖を感じ、忌避・逃避行動をとるのが「広場恐怖症」です。
※2.「非定型うつ病」の症状は、いわゆるうつ病とは症状が異なり”うつ病”らしさがないため見落とされがち。
主な症状
▼気分反応性
- いつもうつ状態にあるわけではなく、周りで起こる出来事に気分が左右されます。
- 好ましいことがあると、気分がよくなりますが、嫌なことがあると激しく落ち込みます。
▼過剰に眠る(過眠)
- 過眠状態は、抑うつ気分と併行するので気分が激しく落ち込むと眠気が強くなります。
- 1日に10時間以上眠る日が1週間に3日以上あったり、眠っていなくても。ベッドにいるのが10時間以上なら過眠です。
今のわたしはまさしく「過眠で、朝昼計4時間+夜9時間」です…。
▼体が鉛のように重く感じる
- 単に疲れやすい状態を超え、まるで手足に鉛が詰まっているかのように体が重く感じられる症状。
- 立ち上がるさえ大変で自分ではどうにもなりません。
- 周囲からは怠けているとか、わざとやっていると誤解されます。
本当に寝返り1つするのも大変な症状なので理解して頂きたい点です。
▼過食・体重の増加
- 「何か1つしていないと気持ちが落ち着かない」という不安感から食べることへの過剰な衝動が起こります。中でも、チョコレートなど甘いお菓子への欲求が強くなります。
- 週に3日以上、度を越して食べるようなら「過食」です。
- この行動に伴い体重も増えます。
3ヶ月の間に、健康時の5%以上体重が増えていれば「体重増加」とみなされます。「過食」は脱しましたが、ストレスが溜まってくるとやはり、「チョコレートなどの甘いお菓子」に手がいってしまいます。
▼拒絶されることの過敏性
- 他人の侮蔑的な言動や軽視、批判に対して極度に敏感になり普通では考えられないほど激しい反応を見せる。
▼人との接触を避ける対人恐怖
- 対人関係の”不安”や”心配”とも関りがあります。
- 「パニック発作」によって”人前で恥ずかしい思いをするのではないか””見ず知らずの人に迷惑を掛けるのではないか”といったことが恐怖の対象になってしまいます。
これが高じると、人との接触を避けるようになる。「二次的対人恐怖(社交不安障害)」でパニック障害の患者さんの約1/3の方に現れるといわれています。
▼攻撃的になる
- ”非常に攻撃的になる”場合があります。
- 攻撃性は「怒り発作(アンガーアタック)」となって現れます。
- 些細な刺激に対して「キレる」状態になり、大きな反応をしてしまう病的な行動です。
この症状が出たときは「キレていると感知せずに」怒ってしまいます。なので「なんで私あんなにキレたんだろう?」「あんなの私じゃない」と戸惑い反省しています。
▼依存的になる
病気になる前は行動力があり、何でも自分でできた人もパニック発作を繰り返すようになると発作への”不安”や”恐怖”から人の助けを求め、人に頼るようになります。
特に、「広場恐怖症」が高度になってくると”友人・知人・家族”などに絶えず保護を求めるようになることもある。
ただし、病気によって依存的になるのは一時的で大部分の人は治療の効果が現れて不安感や恐怖感が落ち着いてくれば一人立ちしていきます。
▼自己中心的になる
「非定型うつ病」を併発すると自己中心的でわがままな行動をとることがあります。
自分の感情を表に出すことが少なかった発症をした当事者が、パニック障害によってその壁が破られ自己中心的な気分が表に出るようになったと考えられます。
☆発症をした当事者さんの自己中心的な行動は、社会的にはマイナスですので家族や周囲の人は冷静で客観的な目で発症をした当事者にアドバイスしてあげるといいでしょう。
パニック障害になる人の特徴や原因は?
特徴
- 一生に一度は経験する割合は100人に2人~3人
- 決して稀な病気ではない
- 20代~30代に多い
- 女性に多い(男性の約2~3倍)
- 男性でもなる可能性がある
- 苦痛や障害はうつ病の人より高い
原因
性格や気のせいではなく「脳の誤作動」・「ストレス」・「体質」の影響による病気。
最初は不安になるような理由は何もないのに、不意に嵐のような不安におそわれパニック発作を起こします。
これは、脳内の神経伝達物質がバランスを崩し、脳が誤って作動するためと考えられています。
POINT
- パニック発作は、危険を知らせる脳の仕組みの誤作動による
- 神経伝達物質がアンバランスになり、脳が機能障害を起こす
- 不安をいだきやすい体質や強いストレスは発症のリスクになる
▼脳が誤って行動しパニック発作を起こす
脳には危険性が迫ると警報を鳴らすしくみがあり、この警報システムは敏感で不安定なために”誤って行動”することがある。
そのため、まわりに危険がないのに危険を伝える物質が分泌され脳内の様々な領域を刺激する。
この刺激は、恐怖感を引き起こすだけでなく”動悸・呼吸困難・吐き気”など自律神経症状を引き起こします。
▼誤作動の誘因は神経伝達物質の不均衡
脳には、このようなバランスをとる仕組みがあるのですが、パニック障害ではアンバランスになってしまい発作が起こります。
現在では、パニック障害の治療薬(SSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬となっている。
▼ストレスや体質は発症のリスク因子になる
パニック障害の発症にはストレスも大きく関ります。
「パニック発作」は何の理由もなく突然起こりますが、実は発作の前に強いストレスを受けていたケースが少なくありません。
ストレスは脳にダメージを与える
- 強いストレス体験が重なると過敏になって些細なことにも恐怖感を覚える
- ストレスが長引くと、自律神経にもダメージを与える
- ストレスを受けている最中に発症するという傾向があります
(男性の場合)
仕事で追い詰められている状況が多い
(女性の場合)
パートナーの横暴、嫁・姑の苦労など家族関係のトラブルによるものが多い
体質
- 遺伝性の病気ではありませんが、不安を持ちやすい体質を受け継ぐことはある
- 発症をした当事者さんの家族歴を調べると、血縁者にパニック障害、うつ病、恐怖症、アルコール依存症の人がいるケースがかなり見られる
- 元々不安を持ちやすい素因(体質・気質)があり、それが環境による影響の受け方によって、パニック障害にだったりうつ病やアルコール依存症になると考えられている
- 脳内の不安に関係する神経伝達物質の合成量やそれを感じる受容体の感度のことで、こうした生まれながらに持っている体質の違いがあると考えられる
- 体質や気質+環境やストレスなど後天的な外因が加わって発症する
- 元々パニック障害の人には、物事を悪い方向に考えがちな傾向があります。
- 落ち込みやすい心のクセのようなものがあり、そのクセはうつ病になるとさらに強まります。
カフェインをなるべく摂取しない
カフェインは脳を刺激しパニック発作を誘発するため、コーヒーなどを飲んだ後にパニック発作が起きやすくなります。なるべくカフェイン摂取を控えるようにしましょう!
”タバコ(ニコチン)・アルコール・薬物(咳止め、経口避妊薬、覚せい剤)”なども誘発物として挙げられます。
換気の悪い場所を避ける
二酸化炭素もパニック発作の原因の1つと考えられています。
体内に二酸化炭素が増えると呼吸が増え息苦しさが不安になってパニック発作を引き起こしますので、部屋の換気は時々おこない換気の悪い場所は避けましょう。
家族・友人に「パニック障害」であることを告げられたらかける言葉は?
傷つけずに受け止める言葉は?
発症をした当事者さんへの対応で心がけたいこと
- 発症をした当事者には「安心感」を与えることを第一にする
- 病気を正しく理解した上で世話を焼き過ぎず、必要なときは手を差しのべる
- 発症をした当事者は「こわがり」
- 発作のような激しい症状にも慌てず冷静に対応する
- 症状が変化しても一喜一憂せず変わらない姿勢で接する
- 発症をした当事者の「良いところ」や「できていること」に目を向け認める
- 心身が不安定な発症をした当事者さんには「おおらかにゆったり」と接する
上記を踏まえたうえで発症をした当事者を傷つけない言葉をピックアップ
(友人)
- 「うちあけてくれてありがとう」
- 「辛かったね」
- 「抱え過ぎ、頑張り過ぎだよ」
- 「何かあったら言って」
- 「そばにいるから大丈夫だよ」
(親・配偶者)
- 「うちあけてくれてありがとう」
- 「これからは、一人で悩まずに話して。困ったことがあったら何でも話してね」
- 「見守ってるよ。大好きだよ。」
- 「わたしがいつもそばにいるから大丈夫だよ」
- 「この病気は治る病気だから急がなくていいよ」
- 「絶対あなたは大丈夫」
- 「他の人の言葉なんて気にしなくて良いから、もう働かなくていいよ」
- 「今、自分にできることをしていればそれで十分」
- 「少し休んでみる?」
☆発症をした当事者さんは「助けを求められない状況」をおそれているので
「そばにいるから大丈夫」と言って”安心”させてあげることが大切です。
パニック障害を告白するひとの心理状態は?
ここでは、個人的心理も交えながらお話させていただきます。
☆発症をした当事者さんは「逃げられない状況」「助けを求められない状況」をおそれています。なので、上記のことからこういう心理状況が読み解けると思います。
- 「パニック障害」のことを正しく理解し、偏見の目で見ないで欲しい
- 今のありのままのわたしを受け入れ、サポートして欲しいと同時に、大切なひとたちの負 担になりたくないという気持ちも知って欲しい
- 大切な人に、こういう病気があってこういう症状が起きるということを知って欲しい
- もう自分一人では苦し過ぎるから助けて欲しい
- 「パニック発作」が起こったわたしを見ても見捨てないで
- 今は、そばで寄り添いわたしを一人にしないで
- 大切な人に病気のことをうちあけられることでこころが軽くなる
「パニック障害」の症状がでた人にかける言葉は?
「パニック障害」の症状がでている人を見かけた、かける言葉や対処は?
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