生涯で病に罹らない人はいない、と言っても良いほど、人の一生と病とは切っても切れない関係です。自分自身であったり、大切な家族、友人であっても、不安な気持ちは誰しも同じ。
家族がいざと言うとき、どんな言葉を掛けてあげれば良いのでしょうか。安心させてあげたい、少しでも不安を取り除いてあげたい。でも、どう接したら良いのか分からない。
そんなときのため、ここでは、これから手術を控えた家族への言葉がけや接し方について、私自身の手術の経験も交えながら、いくつかポイントをご紹介しようと思います。
ほんの少しの心遣いから、本人の気持ちが楽になり、それにより周りの方も一緒に元気になれればこんな良いことはないのですよね。
手術前の家族はどのような心境にある?
一口に手術と言っても、病気の種類によって施される術式は様々です。そのどれもが外科的な処置により治療を施し、病を治すことが目的です。
しかし、手術についての詳しい内容は医師から十分に説明を受けて、頭では分かっていても、気持ちはなかなか追い付かないのが現状です。
慣れない病院のベッドで、不安や漠然とした恐怖が湧き上がってくるのは抑えようもありません。それに加えて将来の心配なども現れて、一言で云うなら、泣き出したい気持ち、かも知れません。
そんなとき、あなたなら、どのような言葉をかけてもらいたいですか。
手術の前には身体を休め、体力をつけなくてはなりません。良く眠れるように不安な気持ちをやわらげてくれる言葉はどんな一言でしょうか。
また一方で、家族はあなたの不安を感じ取るかもしれません。どのように接したら余計な心配をさせなくて済むのでしょうか。
手術前の家族への具体的な励まし方は?
元気のない姿を見るとつい励ましたくて、「頑張って」などと言ってしまいがちです。でも、患者である家族はここまで病と闘って来ており、もう十分に頑張っています。
そのような言葉はかえって苦痛を与えてしまい、辛い気持ちにさせてしまうでしょう。それよりは、むしろ、次のようなことを心がけてみると良いと思います。
家族に寄り添う言葉を掛ける
「一緒に頑張ろうね」や、「つらいときは話してね」といった寄り添う言葉をかけることで、一人ではないんだ、という連帯感や安心感が増します。
気分が落ち込んで塞ぎ込んでいるときや不安や恐怖から泣いてしまったときでも、無理に励ましたりせずに、一旦は、気持ちを受け留めて「そうだったんだね」、「辛かったね」と寄り添ってみましょう。
特に一人で入院していると、心細く誰かに頼りたいものです。心のスキンシップがあると心強く感じて、不安な夜もきっとよく眠れると思います。
家族の話をよく聞いてあげる
どんな細かいことでも、話したいことがある時はできる限り耳を傾けます。そのときも上手な言葉や回答は必要ありません。ただ静かに聞き手に回ってあげることで、気分も落ち着いて来るでしょう。
一人でいる時間が長くなると、あれこれ考えてしまいます。元気で忙しくしている時とは、気持ちのあり方が違っています。些細なことが気になってしまうもの仕方ないことなのです。言ってしまえば気が納まることもありますよね。
こんなときでないと聞けない話もあるかもしれません。そう思うと貴重な時間なのかもしれません。
ひとりでも見返せる手紙を書いて渡す
なかなか言葉に現せないときもあると思います。そんな時は、手紙も良いかも知れません。負担にならないようにあまり長文でなく、内容も生活の様子や日常的な報告などの中に前述のような寄り添いの言葉を書くなど、さりげないのが良いです。
私は、入院中に子供たちから二人の似顔絵をもらいました。それを病室のテーブルに置いて、いつも眺めていました。あまり上手な絵ではなく、きっと急いで描いたのでしょう。でも、そんな優しい気持ちがとても嬉しく、見ていると元気をもらえたことを思い出します。
何回でも見返せて、夜寝るときなども読み返すことが出来る。手紙の良いところですね。
自分がゆったりした気持ちで接する
入院していると不在中の家のことも気になってしまいます。お見舞いに来てくれるのは嬉しいですが、疲れた顔を見るのは辛いものです。自分が負担になっていない、みんなが無事に生活していると感じることで気力も増します。
病気の家族を支えるのは、大変なことです。育児や仕事など、普段どおりの生活に加えて、お見舞いに訪れるのはそれなりに疲労が伴います。これを読んでくださっているあなたもきっと忙しい思いをしていらっしゃることでしょう。
そんなときこそ、交代で訪問したり家の仕事を分担したりして自分が休養をとり、ゆったりした気持ちで手術を控えた家族に接するようにしてください。
手術前日に家族にかけてあげる言葉は?
前日ともなれば、手術の準備で検査などがあり、本人は落ち着かない気分になっていると思います。あまり多くの言葉をかけるよりも、いつも通りに接しながら、少し先の予定など、将来に良いイメージを待たせるのも効果的です。
「またハイキングへ行こうね」、「あそこの温泉でゆっくりしよう」など手術を意識しない内容が良いでしょう。リラックス効果のあるリラクゼーション音楽なども効果的です。
私の体験から言えば、こんなときこそ本を読もう、と何冊も持っていったのですが、読書は案外、疲れます。結局は音楽を聴くのが一番楽で気分転換に役立ちました。
そして何より、気分が落ち着いているようなら、早めに休ませることが大切です。病室には様々な状態の患者さんが入院しています。大人数で行かず、あまり長い時間、滞在しないように心掛けましょう。
手術を終えたあとの家族にかける言葉は?
手術後は、とにかく疲れています。そして麻酔で意識もはっきりしません。病室に戻ってきた際は、手をそっと握ったり、安心させる口調で「お疲れさま」、「よく頑張ったね」と労りの言葉をかけてあげましょう。
私が今でも忘れられないのは、術後、病室へと運ばれて、戻って来たときに、まだ麻酔が覚めきらず、意識は朦朧としていましたが、待っていてくれた兄が黙って優しく手を“ポン”と叩いてくれたことです。なにも言葉はなかったですが、その優しい感覚が「よく頑張った。偉かったよ。」と言ってくれているようで、とても安心したのを覚えています。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめてみます。
・些細な話でもよく聞いて、貴重な時間を共有する
・何度でも読み返したり、見返したり出来る手紙や絵も喜ばれる
・お見舞いする側も気持ちに余裕を持って接する
・手術が終わった後のプランなどを一緒に考えて、将来に良いイメージを持たせる
・終わったらいたわりの気持ちを伝える
そしてなによりも、あなたがいつでもいてくれて、その手を握っていてくれる、と思うことで頑張れるのだということを、くれぐれも忘れずにいてください。
人は皆、最後には頑張る力を持っています。その力を信じて、応援する私たちの気持ちが、自然と共感する言葉や行動に現れてくるのだと思います。